海を使う 地球を救うために                        

§:目的は 日本の国民・国土を風水害から守るための技術開発
§:材料は 空気・コンプレッサー・高圧ホース・アンカー
§:場所は 日本の排他的経済水域(EEZ)内 当座の対象域は黒潮上流

§:方法は 海の低温深層で曝気させて生じた気泡で人工湧昇流を起す
§:効果は 高温の表層海水温を下げ 台風など低気圧の発達を制御

 二酸化炭素の扱いで 世界的議論が深まるのは良いことだが 結論を出して実行するまでには時間がかかる。救急患者には救急手当てが大切なように 地球温暖化問題も世界各国がそれぞれ救急的に対処出来ることがあれば手がけ ベターな方法が見つかれば それを世界に広めることも肝要だ 。との思いで 及ばずながらもこのブログを起ち上げた。

§:海を使おう 海洋国日本

 海に囲まれた島国日本は 排他的経済水域(EEZ)世界六位の海洋国だ(国交省資料左図参照)。
 本ブログでは 世界に先駆けて 海を使って地球温暖化の気象問題と温暖化に伴う食料問題(別途後日投稿予定)の解決策を提案する。

 右図は気象庁災害気象研究部TOPから転載した台風の模式図。下青色は海 上赤色は同じ気圧高度でも周囲より湿度が高いことを示す。灰色は台風の眼とその壁雲から伸びる層状性の雲を示す。矢印は大まかな大気の流を示しているそうだ。 

§:低気圧の発生発達
 日本列島は 花咲き 鳥鳴き  緑豊かだが 現状は 台風 線状降水帯 洪水 猛暑 熱中症 等々にも見舞われ 国土のどこかで国民の誰かが被害を被る側面をもっている。
 なかでも 線状降水帯がもたらす洪水と 台風がもたらす洪水のいずれも発達した低気圧と関わっている。また その低気圧の発達は 表層海水温と深く関わっている。
 その仕組みは 表層海水温が上昇すると飽和蒸気圧が大きくなるので蒸発が盛んになる。また 暖まった空気は膨張して軽くなり海面からの蒸発で得た水分をたっぷり含んだ水蒸気となって上昇する。水蒸気が上昇すると海面は空気が少なくなるので気圧が下がる。これが低気圧の発生発達だ。その低気圧に向かって 北半球では反時計回りの渦巻状になって空気が流れ込む。これが台風の発生発達の源の低気圧である。だから表層海水温の上昇が問題視されている。


 一方 上昇した水蒸気は積み重なって積乱雲となり風などの気体の動きに伴って異動する。やがてこの積乱雲の水蒸気は 移動先で気温が下がると雨や雹になって降ってくる。その雨は稲を始め私たち動植物に欠かせないが 線状降水帯のように集中すれば洪水となって被害をもたらす。だから 表層海水温の上昇が 低気圧の発達 降水量の増大 洪水被害などにつながると指摘されているわけだ。
 この表面海水温の上昇を抑えるには 二酸化炭素など地球から熱の放出を抑える温室効果ガスを減らせば良いそうだが 石炭石油の化石燃料に頼る生活をしている現実社会にとっては大変難しい問題で 国際的にカーボンニュートラルやカーボンゼロなどと叫ばれている。でも 言うは易し行うは難しで 右から左に対応できる問題ではない。
 そこで それらの考えとは違った方法で とりあえず 救急的に表層海水温を下げて 低気圧の発達 すなわち 線状降水帯や台風の発達などを防ぐ方法として考えられることを以下述べる。

§:表層海水温を下げる 1

 左図は 列島列島の亜熱帯から温帯近海の表面から深海までの水温変化略図。 
 海水は 水深0~5mほどを表層(ときには50m以上深くなることもある) そこから水温が急降下する1000mほどまでを水温躍層 それ以深3℃ほどの低温で安定している深層の三層に分かれている。   
 表層が高温の27~28度℃(赤点線)ほどに上昇すると低気圧の発生発達に深く関わって来る。

 右図は 台風通過後に表面水温が下がる自然現象を示した気象庁の資料。表面水温が下がる原因は 台風の力による下層の掻き回しと低気圧によって下の低温水を吸い上げる効果による。高温度の表層水を下の低温水が下げてくれた事例を示した図でもある。 だが!

 左画像は2024年8月鹿児島県に上陸した超大型台風10号が停滞していた海域の表面水温(2024年08月27日気象庁資料)。九州の南海域に30℃の高水帯(薄紫色)が広がっていた。表層が50m下にまで及んで水温が25℃など高いと低気圧は衰えることなく逆に発達する(気象予報士森田正光さん等)。

 右画像は同じ2024年8月27日の水深50m水温(気象庁資料)。九州の南海域に25℃(赤色)や それ以上の水温が見える(薄紫色)。台風の吸い上げ効果は下から高温水が上って来れば利かない。だから この高温水帯の温度を下げる技術開発が急がれる。

左図は黒潮流路の概略図(宇田道隆「海と魚」より転載)。黒潮は フィリピン東から北上して台湾東を通り琉球列島西を流れ 一部対馬海流に分かれて日本海へ向かうが 本流は九州・四国・紀伊半島・房総半島と日本列島沿いに北上して東へ流れている。黒潮の深さは600m~1000mほどで夏季の温度は20~25℃ほどだと言われているが 近年は前述のとおり30℃に達する水域もある。日本のEEZ内で黒潮最上流は石垣島や宮古島がある西海域。黒潮の東側にある矢印の黒潮反流や渦巻状の水塊に注目。

 

§;表層海水温を下げる 
 記述のとおり 熱帯低気圧など海上で発達する低気圧を人為的に抑えるには 表層海水温を下げれば良いわけだ。実は その表層海水温を下げる冷却材(深層水・水温躍層水)を海洋自身がもっている。言い換えると表層海水温を下げるには 低温の深層や水温躍層の海水を湧昇させて表層海水温と混ぜれば良いわけだ。だから深層や水温躍層水を表層まで湧昇させる技術が開発できれば表層海水温を下げて熱帯低気圧など海上で発生する低気圧を抑えることが可能になる。

 話は変る。現在のお風呂はお湯が撹拌される仕組みがあるらしくて 上下の温度差がほとんどない。だが 一昔前のお風呂は上が熱く下が冷たいので 最初に入る人は湯をかき回して入った。要するに 昔の五右衛門風呂のような釜を暖める風呂の温度は 先に示した海洋の表層・躍層・深層と同じように上層・中層・低層の三層に分かれていたので冷たい下層の水を熱い表層の湯に混ぜて適度な温度にして入ったのだ。

 話を戻す。繰り返しになるが 高い表層海水温を下げるためには 低温の深層や水温躍層水を人為的に混ぜてやれば良いわけだ。そこで どうやって冷たい深層や躍層の水を表層まで持ち上げるかが課題となる。その方法は 怪力のポセイドンやシンゴジラにお願いしたいが 出来そうにないので 人の叡智と技術を駆使して 深層や水温躍層の水を汲み上げるか 湧昇させるか になる。そこで 現在開発済あるいは開発途上の汲み上げや湧昇技術をみる。

§:汲み上げ方式

(1)高知県の室戸海洋深層水アクア・ファームでは 水深374mの所に 内径270mmの取水管を下ろして日産4,000トン汲み上げている。(右図は室戸市資料)

(2)2003年~2005年に相模湾の水深1000mのところに浮体構造物を係留して栄養塩を含んだ深層水を汲み上げる実験をした。(左画像は 大内海洋コンサルタントと三菱重工)

§:永久塩泉方式(ラピュタ計画)

 パイプを深層水の深さまで下ろして パイプの中にある表層水と水温躍層水を排出すると深層水が上がってくる。上がって来た深層水はパイプの周囲にある躍層水や表層水によって暖められて膨張する。膨張すると表層水より軽くなるのでパイプから溢れ出る。その溢れ出た水量がパイプの底から深層水が補う形で入ってくる。だから 一度パイプをセットすれば永久に深層水が表層に浮上する仕組み。

§:海中に構造物を設置する方式
 海底にも流がある。沿岸や沖合に人工構造物を設置すると 流れる側にとって流を遮る障害物になる。だから やむなく障害物に当たって湧昇する。これは 自然界の海底にある礁や堆に当たった水の流れが湧昇することによって好漁場になる現実に着目しての人工湧昇の作成と言える。

 構造物を使った湧昇流作成は 深層水を対象にした汲み上げ式やラピュタ計画とは違って 比較的浅場の海水の流れを利用する違いがある。(図は農林水産省資料)

§:現在 表層海水温を下げる技術はない
 以上 紹介した汲み上げ式 ラピュタ計画 構造物の設置は いずれも魚介類の増産を目的に下層水が持つ栄養塩を利用する技術開発として取り組まれているもので そのままでは 線状降水帯や台風の発生発達に繋がっている表層水温を下げる技術としては十分ではない。

§:曝気(エアレーション)で人工湧昇流を起す
 曝気 すなわち 水底でバブル(気泡)を放出させる方法。気泡を使って低温の深層や躍層の低温水を人工的に湧昇させて高温の表層海水と混合させれば低気圧の発生発達を抑えて 線状降水帯 台風 洪水 熱気などの被害を減らす事が出来る。
 海などでエアボンベを付けてダイビングするとき 呼気は気泡となって上昇する。また 観賞魚水槽では底に空気を送って出て来た気泡が上昇し それに引きずられるか 押し上げられるかして水も上昇する。


 上記の気泡(バブル)の光景にヒントを得て 大海原の1000m以深で曝気(バブル崩壊)させれば 低温の深層水や水温躍層の水が浮上して高温の表層水と混合し その結果 表層の海水温を下げることができるはずだ と言う考えに至った。
 この種の気泡使用を先人が研究していたことを思い出したので 改めてネットなどを使って調べたら 1970年代に中村充さん達が行った研究報告があった。ただ 中村さん達の研究は 農業土木技術の中の水産分野が対象だったためであろうか 海底に空気を送って曝気する研究であっても 目的が港の静穏性を保つためであったり 養殖場などの溶存酸素の補充などが主だったようだ。そんな中で中村さん等の研究仲間の乃万俊文さんによる室内実験結果「エアバブルカーテン(A.B.C.)による成層破壊(1978年農土試報17)」は 下層に重い食塩水 上層に軽い真水を入れ 底からの曝気による気泡を利用すれば食塩水と真水が混合することを証明した貴重な研究結果だ。だったら 海の深さ1000m以深で曝気すれば 低温の深層水や躍層水と高温の表層水が混合して表層海水温が下がる可能性もあり得る と言う考えに結びついた。
 ・中村充「エアバブルカーテン」(1974年農業土木学会誌42)
 ・中村充他「エアバブルカーテンによる成層破壊」(1976)
 ・中村充他「DO改善を目的としたエアバブルカーテンの設計」(1976)
 ・中村充:農業土木試験場報告(1978)

 左図は 乃万俊文さんの室内実験結果(1978年農土試報17)」p1は真水 p2は塩水 気泡が重たい塩水を押し上げている様子を表した模式図。


 この中村さん達の研究グループの研究結果は 深層からの曝気で表層海水温を下げよう と言う私の考えに勇気を与えてくれた。しかし 中村さん達の研究結果は 前述のとおり その対象水深が浅く 1000㍍以深からの曝気で表層海水温を下げようと考える私の目的に そのままでは使えそうにない。やはり まず 大海原の1000㍍以深からの曝気で 表層海水温が実際下がることを確認する海上での実測試験が欠かせないが その前に 世界は広いから 既にこの曝気でもって深層水と表層水を撹拌している機関があるかも知れないと思ってネットで調べた。

§:海底・海中からの曝気(エアレーション)はノルウェーが先行
 海底で曝気させて水深2~300㍍付近にあるレアメタルの採集や 5000㍍ほどの海底でロボットなどを使ってマンガン・ノジュールなどをパイプ内に取込み採取する技術として そのパイプ内に空気を送って 空気が上昇する力を利用して採集物を船上に送ろうとする構想は既にある。しかし この類の構想は パイプの設定が欠かせないこともあって冷たい深層水を湧昇させて表層海水温を下げる構想には馴染めない。
 ところが 海中へ送った空気を曝気させて生じる気泡が上昇する力を使って下層水を湧昇させ 表層水と混合させる方法を使っているノルウエーのOcean Therm社の報告事例があった。そのノルウェーの技術については・佐藤まきこさんやWIRED JAPAN それに知財図鑑が紹介している。
 ・佐藤まきこ(https://getnavi.jp/world/537975/)
 ・WIRED JAPAN(https://wired.jp/2020/10/21/can-a-but)
 ・知財図鑑 (https://chizaizukan.com/property/464)

§:佐藤さんがノルウェーのOceanTherm社を紹介(抜粋要約)
 「海面水温を下げちゃえばいい!『台風』の発生を防ぐ『泡のカーテン』が開発中と題しての紹介。
 1:Ocean Therm社の「熱帯低気圧の緩和としてのバブルカーテン」を見ると ノルウェーは 何十年も前から 冬季海面の凍結を防ぐ技術として海面下からバブルカーテンを使って凍結を防止して来た実績を持っているそうだ。
 (注)このバブルカーテンとは 穴を開けたパイプを海底に設置して その中に圧縮空気を送ると パイプの穴から噴出した空気が穴から上昇する光景がカーテンのような一枚の形状になることによる表現で中村さん等も使用している。
 2:OcenTherm社がハリケーン被害防止策
Ocean Therm 社は 毎年季節的に北米を襲うハリケーンの発達を抑える技術を開発するために 海面下50mからバブルカーテンを送って表層海水温を0.5℃下げる実験で成功したと報告している。また 同社のハリケーン発達防止計画の図説には バブルカーテンを設置するために複数の船を配置した図がある。だが これら技術開発の取り組み状況は2020年頃の資料で その後の記述は見出せない。
 (注)佐藤さんの文に 「このOcean Therm社の技術開発は特別新しいものではない。その後 進展はなかったと見られている」とある。
 2020年以降Ocean Therm 社の公開報告が見当たらないことを考え合わせると 現在 この技術が何処まで開発が進んでいるのかは不明。
 なお ZakZakフジに(2021年10月記載)「台風を小さくする新技術として 冷たい海水を浮上させて海水面の温度を下げるバブルカーテン」と言った某氏の記述がある。これは 彼特有の具体的な新技術も独創的な構想も無いところから推して おそらく上記佐藤さんらの既述やOcean Thermの記述を基に紹介文として記したのはないだろうか? 

左図は 既に実用化している曝気で上下水を混合させる技術使用の施設(山神水道企業団の模式図)。海とは規模は違うがダムの水質保持のためなどで既に曝気を利用している事例。

§:曝気で人工湧昇流を起すカラクリに関心
 私は 既述したような経緯で 海底からの曝気で湧昇流を起して表面水温を下げることに考が至ったのだが 既に ノルウェーのOcean Therm社は 水深50mからの曝気で冬場の凍結問題を解決できたと言う実績をもち 2022年にはハリケーン対策として この湧昇技術を駆使する計画を出していた。だが その後のが進展がわからない。
 私は その昔 水深30m程だが ダイビングの経験も手伝って 曝気と人工湧昇流に関心を深め その上 水槽のエアレーションに触発され また 乃万俊文さんの論文に出会って「水深1000mで曝気させれば人工湧昇流(Artificial Upwellinng)が起きる 起きるはずだ」強まった強まった。だが 具体的にどんな過程を経て下層の水が表層まで湧昇するのか もう少しそのカラクリを知りたい思いがある。そこで 深海での曝気で生じたバブル(気泡)が如何にして浮上するのかを次に探ってみた。

§:深海で曝気から出た気泡は上昇する
 寺田寅彦の「茶碗の湯」にあやかるわけではないが 飲み物が入ったコップの底にストローで息を吹き込むと 呼気は1本の紐状になることなくポコポコと気泡となって上がってくる。このことからも高圧ホースを使って水深1000mの海底で曝気すれば 気泡は紐状に連ねることなく空中に浮く風船のようになって水中を浮上することは想像できる。だが 寺田寅彦ならともかく 愚者の私にとって コップの底と大海原の海底ではスケールが違い過ぎて 気泡が深海の冷たい水を持ち上げて表層まで上昇して表層海水温を下げるイメージが明確に抱けない。

左図は 深海で曝気すると こんな形で気泡は上昇するのでは と想像した下手な模式図。
 ネットには 解りやすい気泡の画像がいろいろあるが 著作権が絡み勝手に使えないので やむなく慣れない手で描いた。


§:机上で思考1 気泡と湧昇流のイメージ強化
 そこで 海底で曝気したときの気泡は 排気口のサイズや空気の排出圧などによって大きさや形状が違ってくるだろうが 気泡と湧昇の関係を自分が「納得で出来るか否か」 ともかく 深海で放出する気泡が浮上する姿を次のような条件をもって机上で思考した。
 仮定 1000mの深海底(101気圧)に高圧ホースを敷く。曝気孔へは陸上のコンプレッサーから空気を送る。曝気孔からの吐出空気量(㍑/分)は6㍑で曝気すると仮定する。曝気すると 気泡は 直径22cmほどのスイカ型の球に近い形となって浮上し始める。海水面(1気圧)に達した時のスイカ型気泡内の空気容量は ボイルの法則に当てはめると 100倍の大きさに膨らむ。600㍑の気泡は浮上途中で分裂するから100個のスイカ型気泡が浮上したと考えた方が解りやすいだろう(この際小さな気泡は無視)。曝気は連続して行うので100個のスイカ型気泡が海面に連続して浮上する光景をイメージすれば なんとなく人工湧昇のイメージに結びつく。だが 例え気泡が水を伴って湧昇したとしても その水が水深1,000㍍にあった冷たい水とは考え難い。
 ともかく これで 感覚的には 深層1000㍍以深で曝気した空気が1分間に100個のスイカ型気泡となって連続して浮上してくれば 下から浮上した気泡に押上げられたり曳きづられたりして低い水温水が浮上して表層水と混じって表層水温を下げる可能性があると私なりのイメージができた。
 (注)ボイルの法則(P1V1=P2V2)は 温度が一定であればの条件が着いている。だから1000m深海を3℃ 表層を28℃とすると25℃の温度差があるので適用できない。だが 気泡は温度が上がれば膨らむ事はあっても縮む事は無いので スイカ型気泡は100個以上になることはあっても減ることはないから数字の複雑さを避けて一定温度として扱った。  

§:机上で思考2 人工湧昇流で表層海水温低下に成功と仮定
 ここで 先走る。陸上から高圧ホースを使って深層へ圧縮空気を送って曝気させて 人工湧昇流を発生させる。この方式で表層海水温を下げる人工湧昇流発生の技術開発に成功した と仮定する。
 そうすると 何処にその人工湧昇流発生装置の高圧ホースを設置するのが適切か と言う課題が出て来る。
 先述した2024年8月に発生した台風10号は超大型に発達して日本列島に多大な被害をもたらした。この台風10号に発達に不可欠なエネルギーを送ったのは 30℃ほどの高水温をもった水深50m層からの補給だと言われている。
 その50m層の水温が高い原因は 水は熱伝導度が悪いので 夏季の太陽熱が50mまで届いたとは考えられない。他にそれだけの高温水を持っているのは 水深600~100mで日本列島沿いを流れる黒潮の他にはない。近年黒潮が暖まった原因に地球温暖化が挙げられるとしても 今後 2024年の台風10号のような日本の国民・国土への被害を回避させるには 救急的にでも黒潮の水温を下げて低気圧の発達を抑える手立を講じなければならない。

§:机上で思考3 黒潮の最上流で温度を下げる

黒潮は日本列島沿いに流れている と言っても 左図(東京都大島事務所)のようにA・B・C・D・N型と流路が区分されるように その流は変化する。
 それに 黒潮には川にあるような土手はない。だから 水深50m層に25℃以上の高温を持った黒潮から派生した流れ(黒潮反流)や暖水塊が日本列島に南海域に点在する。

 黒潮の水温を冷たい深層水を曝気して湧昇流を起して下げる と言っても その黒潮の流路が年 あるいは 時々刻々変わり その上 黒潮から派生した黒潮反流や暖水塊が点在するのであれば 深層の冷たい水を湧昇させる位置が定まらない。
 その点 日本の排他的経済水域(EEZ)内で黒潮流路の最上流の位置は石垣島や宮古島の西と尖閣諸島の東に挟まれた海域に定まっている。つまり この海域を年や季節でほとんど変ることなく黒潮は流れている。だから この位置で黒潮の温度を少し下げることが出来れば 黒潮や黒潮から生まれた暖かい黒潮反流や暖水塊の水温も下がるので 台風の発達を抑え 被害を少なくすることが期待できる。

沖縄県諸島の西を流れる黒潮(赤色線)。左下は台湾(黄色)。 その東に石垣島・宮古島がある(小さな黄色)。その西(赤色線)が日本にとって黒潮の起点。(図は沖縄県1999年の第11管区海洋速報)


 石垣島と尖閣諸島との距離は170kmほど 黒潮の幅は100㎞ほど 深さは700~1000m 黒潮流路の水深は(データ未入手)1500mと仮定して人工湧昇流発生装置の高圧ホースの敷設を考える。
 黒潮の流は秒速2mだから時速7.2km これは 男子競泳選手が100mを50秒で泳ぐスピードと同じだ。そこで石垣島の西で尖閣諸島の東海域に巾100km 長さ100mの水泳プールを設置したと仮想して そのプール内を黒潮に通過させ 海底から低温水を湧昇させて黒潮の水温を5℃ほど下げることを提案する。

§:机上で思考4 高温の黒潮を低温水を撹拌させて下げる
 黒潮が流れる沖縄県石垣島の西の海に 巾100km長さ100mのプールを想定し その海底に略図(下)で示したように縦横50m間隔で曝気孔を開けた高圧ホース3本を敷設して 陸上のコンプレッサーから送った空気を曝気して気泡を浮上させる。気泡浮上で起きる冷水の湧昇流をもって黒潮の水温を下げる。
 なお たとえば30℃の黒潮に20℃の水を混ぜて25℃以下に下げるには30℃と同じ量の20℃の水が要るが 何℃の水がどれだけ湧昇してくるかは 現時点では不明。これについては 別途海上での基礎試験データ収集が必要。
 曝気孔の数は 1本の高圧ホースに50m間隔で100㎞だから2,000個 それが3本だと6,000個になる。黒潮が流れるその下水深1500mの海底に敷設し点在している曝気孔6,000個から曝気された空気が浮上しながら冷水を湧昇させるとイメージできる。
 コップレッサーは 水深1500mの各曝気孔から吐出空気量(㍑/分)4リットル放出するとすれば1本の高圧ホースに2,00個×4㍑/分で空気圧151hPaの空気量が要る(6㍑放出すれば吐出空気量は1,200㍑/分)。 

要約すると 陸上に置いたコンプレッサーから海底へ空気を送り 海底で曝気させて生じる気泡の浮上で湧昇流を起し 深層や水温躍層の低温水を表層の黒潮と撹拌して下がった水温の黒潮を日本列島沿いに流れるようにする構想。

 
§:海上で曝気湧昇流の基礎データ入手が先決
 以上の先走り構想は 夢の話でもある。そこで現実の課題に入る。現在 水深1500m以深へ圧縮空気を送って曝気させて 人工湧昇流を起させたと言う資料も 起きなかったと言う資料もない。だから 実際 海上に出て1500㍍以深に空気を送って曝気して その結果 表層海水温が下がるかどうかを確認しなければならない。
 では どう言う機関が どう言う人が 何処で この現地調査をやるか。遅くとも 2025年の梅雨期 台風シーズンが来る前に被害を食い止めることを念頭に置くなら急がねばならない。
 この課題は 興味を持った民間でも調査まではやれるかもしれないが やはり 線状降水帯や台風の被害と夏季の高温を問題視している国民の声を受けて それに答えるべき公的機関が動くべきだと思う。
 公的機関が動いたとしても おそらく現在所持している知見を基に有識者と称される研究者の議論から始まるだろう。水深1500mからの曝気で湧昇流を人為的に起した事例がないので 構想そのもを否定する意見も出るだろうが 「まず事前海上調査にあまり金がかからないのであれば海上調査を実施して その結果を基に判断しよう」と言う手順を踏むことに落ち着けばいい。

黒潮の流れは 石垣島西に設けられた人工湧昇流で一時的に滞ることもあろうが これはヒトが高速道路の料金徴収所で速度を落とすことと共通する。車が料金徴収所を通過すると すぐ事前の流れに戻るように黒潮も石垣島西を過ぎると すぐ元の流れに戻るだろう(料金徴収所写真はNHKニースの画像から拝借)。   

§:海上で湧昇確認 曝気方法 水温水質調査
 この稚拙な架空の議論は別にしても 自然を相手にする場合 百聞は一見にしかずで 実際海上に出て深海から曝気してみて 湧昇流が生じるか否かを確認する海上現場調査をして その結果で得た資料を基に議論する手順が大切である。
 その海上調査と言っても 何も石垣島沖や黒潮の中でやる必要はない。1500m(151気圧)以深に圧縮空気を送っての曝気で表層海水温が下がるか下がらないかの確認が出来ればいい話だ。
 だから調査は 海中ダイビングで一般的に使用されている200気圧の空気ボンベに充填している程度のコンプレッサーが使えるか あるいは 200気圧のボンベそのものを利用すれば 水深1500m付近の所から曝気はできる。日本の沿岸で1500mの水深を有する海として 相模湾 駿河湾 富山湾がある。これらの湾であれば コンプレッサーや空気を送る耐圧ホースを置ける船であれば良いので 海上調査は大がかりな船舶でなく100トンほどの船てもできる。
 そんなことを考えると 石垣島沖や黒潮真っ只中での調査よりも湾内での調査の方が安上がりだろう。ともかく 2025年の線状降水帯や大型台風が発生する前に対処することを念頭に置くべきである。

 一旦ここで 地球温暖化問題緊急対応策は閉じて 少々期間を置いて海を使って二酸化炭素を減らす話に移る

 
 



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“海を使う 地球を救うために                        ” への1件のコメント

  1. 藤岡美穂のアバター
    藤岡美穂

    はじめまして (こちらのブログでは、はじめまして)
    難しい詳細な理論は解らないのですが、感覚的に、良い案だと思いました。Facebook友人も、台、風は変化させることができるといった記事を載せていたのをチラ見したこともあり、亀山先生の案も実現できたら効果があるのではないかと思います。日本の弥生時代からの歴史も『黒潮』が大きく関わってきていますよね。令和のここに来て今一度 海洋民族 日本は、大きな冒険をしたいと、ワクワクします。これからも、こちらのブログ楽しみにしていますので、Facebookで更新を告知願います。 拝

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